一緒に写真を撮らせて頂いたこちらの方は車いすラグビーの日本代表である乗松聖矢選手です(プロフィールはこちら)
乗松選手はシャルコーマリートゥース病という先天性の疾患で16歳で車いすバスケット、23歳で車いすラグビーに転向されてプレーされています。
先日、乗松選手をサポートさせていただいた時に「かなり動きやすくなった」とのことで私の関わりの何がパフォーマンス向上に効果的だったのか考察も含めてご紹介させていただきます。
この内容をお読み頂いた方に車いすラグビーをより知ってもらえると共に、車いすスポーツ競技のケアや練習で注意するポイントが伝わればいいなと思います。
初めての介入した時のチェックポイント
車いすの漕ぎ方から分析
初めてお会いした際には練習後に介入させていただいたのですが、「特に不調はないです」とのことで体調に関して問題は感じられておられませんでした。
ですが、車いすの漕ぎ方を分析していると以下のポイントが気になりました。
[box class="blue_box" title="乗松選手の車いすの漕ぎ方の特徴"]
・頚椎(首の骨)はよく動く
・上部胸椎(背中の上の方の骨)は動かない
・下部胸椎(背中の下の方の骨)は動きすぎる
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という風によく動くところとあまり動かないところの差が激しく見られました。
基本的には上部胸椎はよく動き、首は安定していた方が車いすを漕ぐ効率が良く力が発揮しやすいと言われています。
また下部胸椎の筋肉はよく使うためにすごく発達し、一方で上部胸椎の筋肉はあまり使っていないためか薄く未発達な状態でした。
そこで実際に体を触らせていただくと、首はガチガチに硬くなっており、頚椎・胸椎の骨の動きも小さくなっていました。
体が軽く出来た3つのポイント
この漕ぎ方のクセに対して3つの介入を行いました。
[box class="blue_box" title="初回の介入ポイント"]
POINT1:脊柱のコンディショニングで背骨の柔軟性を出す
POINT2:うつ伏せで上部の胸椎を動かす練習を行う
POINT3:車いすの漕ぎ方を変える
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この3つの点を注意して行っていただきました。
POINT1:脊柱のコンディショニングで背骨の柔軟性を出す
まずは硬くなっている首から背中の背骨の骨を一つずつ動かしていきます。
乗松選手は腰の骨の動きはしっかり動くのですが、背中から首にかけての背骨の動きが少なく、筋肉もガチガチに張っていました。
こういった筋肉が硬くなっている場合は、初めから筋肉をマッサージしてはいけません。
なぜならガチガチの筋肉をグイグイ押すと筋肉が反発して揉み返しを起こしやすいからです。
ですのでウォークランプロジェクトでは初め背骨を正しく動かすことから始めます。
そうすることで脳が反応して筋肉が緩みやすくなる特性がありますのでそれを利用して体に負担の少ない施術を行っていきます。
POINT2:うつ伏せで上部の胸椎を動かす練習を行う
実際に骨の動きや筋肉の動きが良くなったら、今度は正しく動かす練習を行います。
良くヨガでキャットストレッチといって四つ這いで背骨を丸める運動がありますが、あれです。
このブログでも紹介していますね↓
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乗松選手の場合は四つ這いではなく、うつ伏せで肘をついてもらう様な形で行いました。
特に大事なのは「動きの少ない上部胸椎を動かすこと」
感覚を掴むまでは結構難しいですが徐々にコツを掴まれて動かせる様になられました。
POINT3:車いすの漕ぎ方を変える
先ほどの車いすの漕ぎ方を見ていると、腕の力を主に使って漕いでいるなと感じました。
ですがさらに楽に素早く漕ぐには体幹の力を使って漕ぐ必要があります。
そこでPOINT1と2で背骨の柔軟性と動かし方を覚えてもらい、漕ぐときにもその背中の動きを意識してもらうことで楽に駆動ができる様になったとのことでした。
結果として、翌日の練習では体が軽くなって動きやすくなったとメッセージをいただきました。
練習前の介入で体がポカポカに
2回目の介入は東京での1週間の合宿と長距離の移動をされた後でした。
そんな時に練習前に準備運動がてら背骨のコンディショニングを実施しました。
通常ならここで練習をすると、疲労で体がガチガチになってしまっているそうなのですが、その日はそんなこともなく、
「普段は合宿後は疲れでなかなか動けないのに、体が軽くなって動きがスムーズになった。」
「今日みたいな寒い日は体が温まるのに時間がかかるけど、今日はすごくポカポカする。」
と嬉しい感想をいただきました。
背骨のコンディショニングを行うと筋肉がリラックスした状態になるため、全身の血の巡りが改善します。
ですので施術後に”ポカポカした感じがする”という方は結構多いですね。
車いすラグビーは非常に激しいスポーツですので、今後ともベストコンディションで競技に臨めるようにサポートさせていただきます。
スタッフからのコメント
[voice icon="https://walkrun-project.info/wp-content/uploads/2019/10/nagakura-225x300-min.jpg" name="長倉" type="l fb"]
パフォーマンスを高めるには筋トレやストレッチを行うだけのではなく、動作を分析して課題を見つけることが大事です。
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体のスタミナつけたり、疲れにくい体を作るためにはトレーニングが必要と世間では思われています。
もちろんトレーニングは必要ですが、筋力トレーニングだけではなく体の正しい使い方を覚えて使うことがスポーツ競技に限らず重要です。
また硬いところは柔軟性を出す、弱いところをトレーニングで補うといったように課題を分析して解決していくことでパフォーマンスは劇的に改善します。
コンディショニングについて詳しく知りたい方はこちらで説明しています↓
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追伸
今回の記事を読んで、「えっ車いすのラグビーってあるの?」と思われる方もいたかもしれません。
そんな方はこちらの資料がわかりやすくまとめてあってオススメです。
かんたん車いすラグビーガイド(公益社団法人 日本障がい者スポーツ協会 発行)
障がい者スポーツのイメージとはかけ離れた激しいぶつかり合いのあるスポーツですので、東京パラリンピックの前にぜひ予習されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。